どんな患者さんが対象?

現在、陽子線の対象例は保険収載例、先進医療例、自由診療例の3つに大きく分けられます。表1に保険収載例、表2に先進医療例を示します。自由診療例で良い適応例としては大きな骨転移で痛みがひどく、通常の治療では制御困難な症例、肝転移例では4か所以上例では先進医療の対象になりませんが、一つの腫瘍が大きく、通常の治療で制御困難な腫瘍などを対象と考えています。

陽子線治療の対象 公的医療保険
陽子線治療の対象 先進医療

遠隔転移があっても陽子線治療は可能ですか?

保険診療のがんでは頭頸部腺様のう胞がんは肺転移があっても保険診療の対象ですが、その他のがんでは遠隔転移がある場合は保険診療の適応になりません。
先進医療でも同様な対応になりますが、転移性病変の中でも3か所以内の肺転移、肝転移、リンパ節転移は対象になります。

抗がん剤治療をしていても陽子線治療は出来ますか?

陽子線治療は進行がんに有用と考えています。抗がん剤併用が不要な症例もありますが、多くの進行がんでは抗がん剤との併用による治療が標準治療になりつつあります。

高齢ですが治療できますか?

可能です。これからの高齢化社会に陽子線治療は重要な治療になると思います。

乳がんは治療できますか?

乳がんの肺転移、肝転移、リンパ節転移は3か所以内という制約がありますが、先進医療としての治療が可能です。特に胸骨(胸部の正中にある骨)横に出来る大きなリンパ節(傍胸骨リンパ節)には有効です。その理由は通常の放射線治療では心臓に照射されるためです。
なお、現在、国内で複数の施設で臨床試験が行われています。当センターでは、臨床試験の結果次第になりますが、実施を検討します。

がんが小さいですが治療できますか?

もちろんです。ただし手術の方が色々な面で望ましいと判断した場合は手術をお勧めします。

一度他の病院で放射線治療をしたのですが陽子線の治療はできますか?

通常の放射線治療との比較で陽子線治療の方が高い効果が得られることが多いと思いますが、治療部位、また以前受けた放射線治療の線量で可能なのかどうかの判断をします。治療することで予想外の副作用が出る可能性もありますので慎重な対応が必要となります。
なお、一部の頭頸部がんでは当院で行っている抗がん剤を動脈内に投与する動注治療との併用は有効な結果が得られると考えています。

陽子線治療の適応にならない場合もありますか?

白血病などの血液病、癌性胸膜炎、癌性腹膜炎などの様に広範囲に癌が散っている場合は適応にはなりません。

どんな治療?

X線治療との最も大きな違いはX線治療では皮下数㎝の深さで最大となり徐々に減衰して行きますが、陽子線の場合はある深さでエネルギーを放出することで最大の線量を放出します。これはブラッグピークと称されますが、それより深い所では線量はゼロとなります。つまり‘がん’に放射線を集中的に集めることが可能になりました。このことは治療成績を上げるだけでなく、副作用を減らせることを意味します。もう一つの違いは同じ物理線量でも陽子線治療は殺細胞効果もX線治療の1.1~1.2倍とされており、より高い治療効果が得られることが示されています。
重粒子線治療とは炭素イオン線治療のことを指すのが一般的です。陽子線はX線治療の1.1~1.2倍効果が高いと述べましたが、重粒子線では2.5~3倍効果が高いとされています。癌は正常組織の中に入り込む性質があり、これを浸潤と呼びますが、治療効果が高いということは浸潤した周囲の正常組織にも害が及ぶ可能性もあります。つまり、より重い障害が出る可能性があることを意味します。‘がん’の部位、種類により、最適な治療法は変り得るということを示しています。私達は最適な治療が従来のX線治療ならX線治療を行ない、また重粒子線治療の方が望ましいと判断した場合は、この治療が可能施設にご紹介します。

副作用はありますか?

放射線の集中性が高いことは全体として副作用が減ることを意味しますが、がんの横に陽子線治療で障害を受けやすい臓器(例えば膵臓に近接する十二指腸、胃)は障害を受けやすい臓器です。がんにはできるだけ多くの陽子線を集中させ、正常組織には可及的に減らすために色々な工夫をしますが、残念ながら副作用がゼロになることはありません。
当院には高気圧酸素治療室があり、副作用が出た方にはこの治療を含め、適切な対応をいたします。

近隣に宿泊施設はありますか?

JR美濃太田駅の周辺に宿泊施設がいくつかあります。(当院には駅北口からは車で約5分。バスのご利用も可能です。)
以下の施設には優待料金がありますので、お問い合わせ下さい。

・フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜清流里山公園(車で約5分)
・ホテルインディゴ犬山有楽苑(車で約25分 無料送迎バスあり)

通院が出来ない場合は入院できるでしょうか?

可能です。放射線治療科として入院ベッドを持っています。他科に入院した方が望ましい場合は他科の医師と相談し、適切な対応をいたします。

陽子線治療を受けたあと周囲の人、家族、子供などに放射能などの影響はありませんか?

ありませんのでご安心ください。

陽子線治療センターで治療したいのですがどうすればよいでしょうか?

紹介状をお持ちください。かかりつけの病院に紹介状を用意していただき、その病院の病診連携室から当院の病診連携室を通す方法が一般的です。
また、当センターホームページの患者様用のお問い合わせフォームがあります。気兼ねなくご相談ください。

家族だけでの相談もできますか?

可能です。適切な判断をするには紹介状、画像などが必要になります。

セカンドオピニオンを希望したいのですが、患者本人が来院できない場合、家族が代理で説明を受けることはできますか。

可能です。適切な判断をするには紹介状、画像などが必要になります。

治療期間や費用は

治療には何日くらいかかりますか?

がんの種類、進行具合、同じがんであっても部位により異なります。治療は月曜日から金曜日の週5日間となりますが、2週間から6週間と大きな幅があります。時間をかけた方が良い場合は2ケ月近くかかることがあります。

何回くらい照射しますか?

がんの種類、進行具合、同じがんであっても部位により異なります。治療は月曜日から金曜日の週5日間となりますが、回数は10回から35回と大きな幅があります。

週に何回照射しますか?

現在は週5回が原則ですが、将来的には週2回あるいは3回の照射も検討しています。

治療費はいつまでに支払えばよいですか?

原則は治療開始時となります。通常の放射線治療は1回あたりとなりますが、陽子線の場合は一連の治療に対する治療費となります。従って10回の照射の場合も35回照射の場合も同額になります。

陽子線治療が始まってからの食事の注意点はありますか?

腹部照射の場合は照射5時間前から禁食とすることがあります。前立腺がんの治療の場合は便秘があると前立腺が動き、正確な照射ができなくなることがありますので排便が定期的に出るようにしてください。
個別の注意点は看護師から詳しい説明があります。